岡本医院 おかもと糖尿病・内分泌クリニック

糖尿病患者さんに読んでいただきたいこと

糖尿病治療はひとりひとり違います 糖尿病治療はひとりひとり違います

ご自身の糖尿病の種類や原因をきちんと知っておられますか(説明されていますか)?糖尿病には多くの種類や原因があり、また進行具合も患者さんによって様々で、おひとりおひとりに合う薬、合わない薬があります。

糖尿病では、かぜや短期の胃腸炎などと違って薬との付き合いが長期間になります。古い薬、合わない薬を何年も使っていると、治療のつもりが逆に膵臓(インスリンを作る大事なところです!)に悪影響が出たり、腎臓や肝臓を悪くしたりすることがあります。きちんと自分の糖尿病に合った薬を使っているかどうかで、10年後、20年後の状態が大きく違うのです。また糖尿病の分野は新しい薬が次々に開発されているため、それも選択肢に含めてより良い治療を検討しなおす必要があります。患者さんひとりひとりの状態を把握し、数多くある糖尿病薬の中からその方に合ったものを選び組み合わせて提案するのが私たち糖尿病専門医(※)の仕事です。

きちんとご自身に合った適切な治療を受けるためにも、特に最初の治療設定においては糖尿病専門医を受診すること、また定期的にご自身の糖尿病の状態をチェックし薬を変える必要がないかを診てもらうことをお勧めします。

  • 糖尿病専門医:日本糖尿病学会が認定する資格です。知識、経験だけでなく、論文・学会発表や啓蒙活動への参加など厳しい選定試験・基準をクリアして初めて取得することができます(5年毎の更新制です)。「糖尿病指導医」は、糖尿病専門医を取得しようとする医師を教育、指導する立場の資格です。
  • ※糖尿病のお薬の説明、注意事項(「この薬はこういう糖尿病の方に向いています」「こういう方はこの薬は飲んではいけません」など)は、当院の「糖尿病に関する展示室」に掲示しています。実物のインスリン注射器や、最新の治療機器、血糖測定機器なども展示していますのでぜひご覧ください。
HbA1cを下げすぎていませんか?
HbA1cを下げすぎていませんか?

“HbA1c( ヘモグロビンエーワンシー ) は低ければ低いほど良い” という考え方は、今の時代では誤りとされています。10年ほど前までは、“血糖値はどんどん下げるべきだ”、“HbA1cは5.8%未満(現在の6.2%)にすべきだ” とされていました。しかし、2008年に発表された研究結果で、「糖尿病を良くしようとしてHbA1cを無理に下げようとすると逆に死亡率が上がる」ということが示されました。その理由は「低血糖」です。低血糖は特に脳や心臓にダメージを与えるとされ、認知症や心筋梗塞などの増加に関わっています。また急激にHbA1cを良くすると手足のしびれや眼底出血などの合併症が進むこともわかっています。

HbA1cを下げすぎていませんか?

薬を何種類も使えば、HbA1cを下げるのは簡単です(下がるのが当然です)。ただ、一度に多くの薬を始めることには、低血糖の危険性、副作用の危険性、合併症が逆に進んでしまう危険性があり、また患者さんの精神的負担、薬剤費の負担も大きくなります。そのため専門医は基本的に薬を一度にたくさん始めたり、急にHbA1cを下げようとしたりはしません。
2013年以降、HbA1cの目標値は「7%未満」に設定され、2016年にはご高齢の方ではさらに高い値が設定されました。これは低血糖の危険性が次々に明らかになってきたことを反映しています。

ご自身にあった薬をきちんと選んで、必要以上の薬剤は使わず安全にHbA1cを下げることが理想ですね。私たち専門医がお手伝いいたします。

あなたの糖尿病の種類は?糖尿病には4つのタイプ

意外と知られていませんが、糖尿病には4つのタイプがあります(医学部の学生さんや研修医の先生に尋ねてみても2,3タイプしか知らないことが多いので、一般の方に認知されていなくても無理もないかもしれません)。
糖尿病は膵臓から出る「インスリン」という血糖値を下げてくれるホルモンの量や効きが足りないことで血糖値が上がる病気ですが、その病態によって以下のような種類に分類されています。

あなたの糖尿病の種類は?糖尿病には4つのタイプ
  • ①1型糖尿病

    1型糖尿病は、膵臓がインスリンを作れなくなってしまうタイプの糖尿病です。幼少期から若年期に発症することが多い印象ですが、中年期以降で発症する方もいます。また最近はある種の抗癌剤によって急激に1型糖尿病が発症することが報告されています(2016年に院長がアジアで初めての論文報告をしました)。
    1型糖尿病の方の多くは自分のインスリンが全く(もしくはほとんど)出なくなるので、現在の医学では生涯にわたりインスリンの補充(注射もしくはポンプ)が必要です。膵島移植などの特殊な治療方法もありますが、現段階では効果は必ずしも確立されていません。膵頭移植の他、iPS細胞関連、人工膵臓など新しい治療の今後の発展が期待されています。
    1型糖尿病の原因ははっきりわかっていませんが、なりやすい遺伝子があることが判明しており、またウイルス感染が関係していると考えられています。

  • ②2型糖尿病

    4つのタイプの中で一番頻度の高い糖尿病です(日常で「糖尿病」という言葉が出る時は2型糖尿病を指していることが多いです)。膵臓からインスリンは出ているけれども肥満や運動不足などのために「効きが悪い」場合や、それほど生活習慣が悪くなくても「出ているインスリンの量が足りない」場合があります(詳しくはコラム4「食事制限、必要ですか?インスリンが「出ない」人と「効かない」人」をお読みください)。 生活習慣の他、遺伝も関係していると言われています。生活習慣に改善の余地がある場合は食事や運動の見直しから、血糖値が非常に高い場合や生活習慣が良くても血糖値が高い場合は食事運動に加えて薬を使った治療を行います。重度の肥満がある場合は外科治療も考慮します(コラム5「糖尿病の外科治療のはなし」)。

  • ③その他の糖尿病

    1型、2型糖尿病と違い、特定の原因によって発症する糖尿病です。遺伝子の異常や膵臓の病気(膵炎や膵癌)、薬の副作用(ステロイドや免疫抑制剤)などによって血糖値が上がってしまう病態です。治療方法は原因やそれぞれの患者さんの病態を考慮して決定します。

  • ④妊娠糖尿病

    妊娠中は血糖値が上がりやすくなります。母親の血糖値が高いと生まれてくる赤ちゃんに良くない影響があるため、通常の糖尿病より厳しくコントロールする必要があります(妊娠糖尿病の診断基準は、1型、2型、その他の糖尿病に比べて厳しく設定されています)。治療に際しては、内服薬は赤ちゃんに影響があるためインスリンを使用します(2018年現在)。

以上、糖尿病の4つのタイプを説明しましたが、どれも「血糖値が上がる」という結果は共通ですので、体に起こること(症状や合併症)も同じで、治療も「血糖値を正常に近づける」という意味では同じです。ただその方法が、前項「糖尿病の治療はひとりひとり違います」でお話しした通り患者さんによって異なるのです。
きちんとした診察や検査に基づいてどのタイプかを見極め、適切な治療法を選択することが大切です。

食事制限、必要ですか?インスリンが「出ない」人と「効かない」人 食事制限、必要ですか?インスリンが「出ない」人と「効かない」人
食事制限、必要ですか?インスリンが「出ない」人と「効かない」人

糖尿病、と聞くと「食事や間食を減らして摂取カロリーを抑えなければいけない」もしくは「体重を減らさないといけない」というイメージがあると思います。しかしこれは一部の糖尿病患者さんに当てはまる内容であって、糖尿病患者さん全員が厳しい食事制限や減量をしないといけないわけではありません。
血糖値が上がる原因には、大きく分けて「インスリンの効きが悪い」ことと「インスリンの量が足りない(=膵臓から十分なインスリンが出ない)」ことのふたつがあります。

  • インスリンの効きが悪い人

    簡単に言うと「太っている人」です。脂肪はインスリンの効きを悪くしてしまうので、いくら膵臓が丈夫でたくさんのインスリンを出せていても、効きが悪いために血糖値が上がってしまいます。このタイプの方は、「食事制限」「減量」が非常に有効です。最初は薬が必要な状況であっても、脂肪を減らすことで薬を減量、もしくは中止できることがよくあります。逆に脂肪が多い状況が長期間続くと、膵臓がインスリンをどんどん作ろうと頑張りすぎてしまい、そのうち疲れ果ててインスリンを作れなくなってしまいます(「効かない」うえに「出も悪く」なってしまいます)。
    その他、体に炎症やストレスがあってもインスリンの効きは悪くなります。

  • インスリンが出ない人

    どれだけ規則正しくバランスの良い食生活をしていても、膵臓から出るインスリンの量が足りなければ血糖値は上がってしまいます。このようなきちんとした生活習慣をしている方に「血糖値が高いから」といってさらに食事制限や減量を強いるのは、栄養不足を招くだけでなく、本来あってしかるべき「食の楽しみ」という人生の楽しみを無意味に奪うことになってしまいます。
    膵臓がインスリンをどれだけ作りだせるかという能力は人によってそれぞれ違いますが、大雑把に人種で分けて言うと欧米人に比べてアジア人はインスリンを作る力が弱いと言われています。日本人も例外ではなく、欧米人に比べてインスリンを作る能力が弱いので、きちんとした生活をしていても加齢やストレスなどの原因によりインスリンの出が悪くなって糖尿病を発症してしまうことが多くあります。
    インスリンが作れない場合には、無理な食事制限や膵臓に負担をかける治療はせず、インスリンを適切に補充することが大切です(インスリン注射は決して「最後の手段」ではありません)。

同じ「血糖値が高い」という状況でも、人によってその原因が違います。糖尿病の治療はその原因をしっかりと把握して、その原因に合った方法を選ぶことがとても大切です。ぜひ、専門医に相談してみてください。

糖尿病の外科治療のはなし
糖尿病の外科治療のはなし

「糖尿病が手術で治る」と聞いたら、どう思われるでしょうか。対象患者さんは高度肥満症の方に限られていますが、実際に糖尿病の外科治療(胃縮小手術)は世界中で行われており、良い結果が出ています。
インスリンはしっかり膵臓から出ているものの肥満のためにインスリンの効きが悪くなって血糖値が上がってしまっている方は、減量すれば(脂肪が減れば)再びインスリンの効きがよくなり血糖値が正常化する可能性があります(薬が要らなくなる可能性もあります)。また肥満の解消は糖尿病だけでなく、血圧、脂質、そして整形外科領域(膝や腰)など多くの面に良い効果があります。
日本でも肥満外科手術が可能な施設は複数あります。興味のある方はご相談ください。近隣では大分大学病院で可能です(国内有数の手術件数です)。

11月14日は大事な日

毎年11月14日は「世界糖尿病デー(World Diabetes Day)」! 糖尿病の世界ではとても大切な記念日です。

11月14日は大事な日

1921年、カナダの医師フレデリック・バンティングによってインスリンが発見され、このことがきっかけで糖尿病の有効な治療法が開発されました(後にノーベル医学賞を受賞されました)。インスリンの発見が糖尿病患者さんにとってどれだけ大きい意味があるかは言うまでもありません。後に世界保健機構(WHO)によりこのバンティング先生の誕生日である11月14日が「世界糖尿病デー」と定められ、世界各地でブルーライトアップを行うイベントが行われるようになりました。またこの11月14日を含む週を「世界糖尿病ウィーク」とし、世界中で啓発のイベントやシンポジウムが行われています(当院も参加・企画しています!)。

日本でも東京タワーをはじめ各地の名所がブルーにライトアップされています。11月に青くライトアップされている建物をみたら、「あ、世界糖尿病デー!」と思い出してみてください。一人でも多くの方に糖尿病の正しい知識を持っていただけると嬉しいです。

院長 岡本 将英

当院では、糖尿病患者さんご自身やご家族に糖尿病や治療に関する理解を深めていただくため、治療薬(飲み薬、注射薬)や医療機器(インスリンポンプや血糖測定器など)の展示を行っています。最新の内容も紹介いたします。是非お立ち寄りください。